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重症感染症における鉄代謝の動態を実臨床で確認-感染症診断・治療への応用に向けて-

2023年12月05日 火曜日 研究成果

本学医歯学総合病院感染管理部の茂呂寛准教授、同呼吸器・感染症内科の番場祐基専任助教、大学院医歯学総合研究科呼吸器・感染症内科学分野の菊地利明教授らの研究グループは、重症感染症における鉄代謝の動態を明らかにしました。本研究において、血流感染症(注1)の経時的な鉄の血中濃度を確認したところ、急性期には低下し、病態の改善とともに回復する急激な変動パターンを示しました。さらに、この鉄の血中濃度の挙動は炎症に伴う鉄調節因子「ヘプシジン」(注2)の作用によるものと考えられました(図1)。こうした鉄代謝の動態は、細菌側に必須の栄養である鉄獲得を妨げ、増殖を抑制する方向に働くことから、私たち宿主による免疫反応の一環と考えられます(図2)。本研究により、実臨床における鉄代謝と感染症との密接な関係が示されるとともに、感染症の診断と治療に新たな視点をもたらす可能性が期待されます。
本研究成果は、2023年11月6日、科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。


図1 重症感染症の経過における鉄代謝


図2 炎症に伴う鉄代謝の調節機序

本研究成果のポイント

  • 全身性の感染症に罹ったヒトの血中で、鉄濃度が急激に変動することを確認しました。
  • この変動は炎症反応と強く関係し、病原微生物にとって重要な栄養である鉄を奪うことにより、その増殖を抑えようとする免疫反応の一部と解釈できます。
  • 本研究の知見により、感染症の診断や治療に新たな視点が得られる可能性が期待されます。
【用語解説】

(注1)血流感染症
循環している血液中から菌が検出された状態を指し、菌血症と呼ばれる場合もあります。

(注2)ヘプシジン
鉄代謝の調節で中心的な役割を果たすタンパクで、炎症などの刺激により肝臓で産生されます。ヘプシジンは鉄を血液に送り出す「フェロポルチン」というタンパク質を制御しています。ヘプシジンが多いとフェロポルチンが減り、細胞外、血中の鉄濃度が上昇することになります。

研究内容の詳細

重症感染症における鉄代謝の動態を実臨床で確認-感染症診断・治療への応用に向けて-(PDF:1.2MB)

論文情報

【掲載誌】Scientific Reports
【論文タイトル】Dynamics of Iron Metabolism in Patients with Bloodstream Infections: A Time-Course Clinical Study
【著者】Hiroshi Moro, Yuuki Bamba, Kei Nagano, Mariko Hakamata, Hideyuki Ogata, Satoshi Shibata, Hiromi Cho, Nobumasa Aoki, Mizuho Sato, Yasuyoshi Ohshima, Satoshi Watanabe, Toshiyuki Koya, Toshinori Takada, and Toshiaki Kikuchi
【doi】10.1038/s41598-023-46383-7

本件に関するお問い合わせ先

医歯学系総務課
E-mail shomu@med.niigata-u.ac.jp

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