東日本大震災で日本海溝底に生じた断層崖を世界で初めて発見-有人潜水艇による超深海での観察-
本学⾃然科学系(理学部)の植田勇人准教授、東京海洋大学の北里洋客員教授、西オーストラリア大学、海洋研究開発機構、デンマーク超深海研究センターの研究者などで構成される国際研究グループは、2011年東北地方太平洋沖地震(以下、「東日本大震災」という。)の震源域にある宮城県沖の水深約7,500mの日本海溝において有人潜水艇による海底調査を実施しました。その結果、同地震で隆起した海底に高さ26m(7~8階建てのビルに相当)の断層崖(注1)を発見しました。現地で計測した地形を詳しく調べた結果、地震が発生した際に日本海溝底では、断層に沿って海底が水平に80~120m動いたことにより先端部がおよそ60m持ち上げられ、その一部が崩壊して断層崖になった過程が示唆されました。
本研究成果のポイント
- 東日本大震災によって日本海溝の底に生じた隆起地形と断層崖を、有人潜水艇によって世界で初めて現地で観察・記録しました。
- 観察された断層崖は、地震をおこした断層のズレが日本海溝の海底面にまで到達したと推定するこれまでの観測結果を支持しています。
- 現地で計測した地形の解析から、地震発生時に震源域の少なくとも一部では、これまでの見積もりより大きい80~120mもの海底の動きがあったと推定されます。
【用語解説】
(注1)断層:地盤のズレを伴う割れ目。
断層崖:断層によって地表がずれた際に現れた崖。
研究内容の詳細
東日本大震災で日本海溝底に生じた断層崖を世界で初めて発見-有人潜水艇による超深海での観察-(PDF:0.8MB)
論文情報
【掲載誌】Communications Earth & Environment
【論文タイトル】The submarine fault scarp of the 2011 Tohoku-oki Earthquake in the Japan Trench
【著者】植田勇人, 北里洋, Alan Jamieson, Pressure Drop Ring of Fire Expedition 2022 Japan Cruise Leg2 science team(プレッシャードロップ号環太平洋火山帯2022日本 第二次航海科学チーム)
【doi】10.1038/s43247-023-01118-4
本件に関するお問い合わせ先
広報事務室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp
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