心血管疾患発症高リスク者スクリーニングに最適化したメタボリックシンドローム(MetS)診断基準の修正案を作成
56万人のビッグデータ解析により女性の心血管疾患高リスク者の見逃しが大幅減
本学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学研究室の山﨑友里恵医師、藤原和哉准教授、曽根博仁教授らの研究チームは、日本国内の18-74歳の56万人の医療ビッグデータを分析し、MetS診断基準を構成する各項目(=ウエスト周囲長(WC)、血圧、血糖、血中脂質)の基準値を、実際に心血管疾患(虚血性心疾患、脳卒中)を起こしたか否かの結果に基づいて再設定し、それによる修正診断基準を作成しました。この新基準を用いることで、日本国内の現行基準では9割見逃されていた、心血管疾患の高リスク女性を5割程度スクリーニングできるようになり、見逃しを大幅に減らせることがわかりました。WCの基準値は、現在の「男性85cm、女性90cm」から「男性83cm、女性77cm」へ修正され、加えて、従来MetS診断に必須項目とされていたWCは、必須項目にしなくても、心血管疾患高リスク者のスクリーニング能力は変わらないことも明らかになりました。
本研究成果は、2023年11月17日、国際専門誌「Journal of Atherosclerosis and Thrombosis」のオンライン版に掲載されました。
本研究成果のポイント
- 日本国内の56万人の約5年間の縦断(経時的)観察における実際の心血管疾患発症の有無に基づき、その予測に最適化された修正新基準では、心血管疾患高リスク者見逃しが大幅に減り、特に女性において9割見逃されていた高リスク者をスクリーニングすることが可能となった。
- WCの基準値は、現行の男性85cm、女性90cmから、新基準では男性83cm、女性77cmへと大幅に修正され、さらにWCを必須にしてもしなくても心血管疾患予測能は変わらないことも判明した。
- 修正新基準では、WCの他、血圧、トリグリセリド(中性脂肪)値、空腹時血糖値の基準値は現行より低下した一方、HDL(善玉)コレステロール値は上昇し、判定が全体に厳格化された結果、MetS該当者は、特に女性で大幅に増加した。
研究内容の詳細
心血管疾患発症高リスク者スクリーニングに最適化したメタボリックシンドローム(MetS)診断基準の修正案を作成~56万人のビッグデータ解析により女性の心血管疾患高リスク者の見逃しが大幅減~(PDF:0.6MB)
論文情報
【掲載誌】Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
【論文タイトル】Usefulness of New Criteria for Metabolic Syndrome Optimized for Prediction of Cardiovascular Diseases in Japanese
【著者】Yurie Yamazaki, Kazuya Fujihara, Takaaki Sato, Mayuko Harada Yamada, Yuta Yaguchi, Yasuhiro Matsubayashi, Takaho Yamada, Satoru Kodama, Kiminori Kato, Hitoshi Shimano, Hirohito Sone
【doi】10.5551/jat.64380
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