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マイトファジーが細胞死を抑制~鉄依存性細胞死フェロトーシスの制御におけるマイトファジーの役割を解明~

2024年04月02日 火曜日 研究成果

ミトコンドリアオートファジー(マイトファジー(注1))は、異常なミトコンドリアを選択的に分解することで、ミトコンドリア機能維持に寄与していると考えられています。しかし、マイトファジーが完全に欠損した細胞はこれまで樹立されていなかったため、その生理的意義の大部分が未解明でした。
本学大学院医歯学総合研究科機能制御学分野の山下俊一助教(2024年4月1日より九州大学助教)、神吉智丈教授(2024年4月1日より九州大学教授)らの研究グループは、マイトファジー因子の網羅的な解析からマイトファジーが完全に欠損した哺乳類培養細胞を樹立しました。その詳細な解析からマイトファジー欠損細胞ではミトコンドリア呼吸機能が低下し、ミトコンドリア由来の活性酸素種(mtROS)(注2)が10倍程度増加することを明らかにしました。さらにマイトファジーによるmtROSの抑制が、鉄依存性細胞死フェロトーシスから細胞を保護していることを見出しました。本研究は、マイトファジーの新たな生理的役割を発見しただけでなく、近年様々な疾患との関わりが多数報告されているフェロトーシス(注3)の制御機構の一端を解明した点でも重要な成果です。
本研究は、京都大学大学院医学研究科附属がん免疫総合研究センターの杉浦悠毅特定准教授、カリフォルニア工科大学のDavid C. Chan教授らとの共同研究で行われました。

本研究成果のポイント

  • マイトファジー完全欠損細胞の樹立
  • マイトファジー欠損細胞がミトコンドリア機能低下とmtROS上昇を示すことを解明
  • マイトファジーがフェロトーシスに抑制的に働いていることを解明
【用語解説】

(注1)マイトファジー:細胞内の様々な成分(タンパク質やオルガネラ)をリソソームに運び込んで分解する現象をオートファジーと言います。マイトファジーは、オートファジーがミトコンドリアを選択的にリソソームに運び込み分解する現象で、ミトコンドリア恒常性維持に重要であると考えられています。

(注2)活性酸素種(ROS):酸素分子が、より反応性の高い化合物に変化したものの総称。生体内では主にミトコンドリアで発生しmtROSと呼ばれています。ROSは、細胞内の様々な物質を酸化し細胞を損傷するが、細胞には抗酸化物質が存在するため、正常な細胞はROSによる損傷は限定的です。

(注3)フェロトーシス:細胞内の鉄(Fe2+)を触媒として細胞膜のリン脂質の過酸化によって起こされる細胞死の一種。近年、虚血性疾患、神経変性疾患や癌など様々な疾患の病態にフェロトーシスが関与していることが報告されています。

研究内容の詳細

マイトファジーが細胞死を抑制~鉄依存性細胞死フェロトーシスの制御におけるマイトファジーの役割を解明~(PDF:1.0MB)

論文情報

【掲載誌】Cell Death & Differentiation
【論文タイトル】Mitophagy mediated by BNIP3 and NIX protects against ferroptosis by downregulating mitochondrial reactive oxygen species
【著者】Shun-ichi Yamashita*, Yuki Sugiura, Yuta Matsuoka, Rae Maeda, Keiichi Inoue, Kentaro Furukawa, Tomoyuki Fukuda, David C. Chan, Tomotake Kanki*
【doi】10.1038/s41418-024-01280-y

本件に関するお問い合わせ先

医歯学系総務課
E-mail shomu@med.niigata-u.ac.jp

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