関節リウマチ・潰瘍性大腸炎治療薬の薬疹リスク因子発見-遺伝子検査による薬疹の発症予防に期待-
理化学研究所(理研)生命医科学研究センターファーマコゲノミクス研究チームの莚田泰誠チームリーダー、福永航也研究員(国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部協力研究員)、国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部の斎藤嘉朗部長(研究当時、現同研究所副所長)、本学大学院医歯学総合研究科の阿部理一郎教授らの共同研究グループは、関節リウマチ・潰瘍性大腸炎治療薬サラゾスルファピリジンの副作用である薬疹[1]の発症に、特定のHLAアレル[2]である「HLA-A*11:01」「HLA-B*39:01」「HLA-B*56:03」がそれぞれ独立して関連することを発見しました。
本研究で同定された三つのHLAアレルは、サラゾスルファピリジンによる薬疹の発症リスクを予測するバイオマーカー[3]としての活用が期待されます。
今回、共同研究グループは薬疹発症患者におけるHLA-A*11:01、HLA-B*39:01、HLA-B*56:03のうちいずれか一つでも保有している薬疹患者の割合は73%であり、日本人集団における保有率22%と比較して統計的に有意に高頻度であることを突き止めました。このことは、この三つをバイオマーカーとして用いることで、サラゾスルファピリジンによる薬疹患者の約4分の3を説明できることを示します。
本研究は、科学雑誌「The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice」オンライン版(4月11日付)に掲載されました。
【用語解説】
[1] 薬疹
薬によって起こる皮膚や眼、口などの粘膜に現れる発疹。
[2] HLAアレル、抗原提示部位
HLAアレルとはヒト白血球型抗原(HLA)を決定する遺伝子の型のこと。HLAは細胞表面に発現するタンパク質。免疫細胞による攻撃の目印となる抗原提示部位を持ち、多くの疾患の発症や副作用の発現のリスク因子であることが報告されている。HLA遺伝子には多くの種類が存在し、さらにそれぞれの遺伝子が数十種類の異なるタイプを持つ。アレルとは対立遺伝子のことで、同一の遺伝子座にありながらDNA塩基配列に差がある変異体を指す。HLA-A*11:01やHLA-B*39:01、HLA-B*56:03はHLAアレルの一つ。HLAはhuman leukocyte antigenの略。
[3] バイオマーカー
疾患の発症や進行の予測に役立つ生体由来の物質のこと。特定の遺伝子配列や血液中のタンパク質や代謝産物などが対象になる。
研究内容の詳細
関節リウマチ・潰瘍性大腸炎治療薬の薬疹リスク因子発見-遺伝子検査による薬疹の発症予防に期待-(PDF:0.7MB)
【掲載誌】The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice
【論文タイトル】Association of HLA-A*11:01, HLA-B*39:01 and HLA-B*56:03 with salazosulfapyridine-induced cutaneous adverse drug reactions
【著者】Koya Fukunaga, Eri Tsukagoshi, Ryosuke Nakamura, Kayoko Matsunaga, Takeshi Ozeki, Hideaki Watanabe, Akito Hasegawa, Natsumi Hama, Maiko Kurata, Yoshiko Mizukawa, Yuko Watanabe, Yukie Yamaguchi, Hiroyuki Niihara, Eishin Morita, Hideo Asada, Riichiro Abe, Yoshiro Saito, Taisei Mushiroda
【doi】10.1016/j.jaip.2024.02.041
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