メガリンの立体構造とリガンド結合様式を解明-腎臓病の新たな創薬に向けて-
本学大学院医歯学総合研究科の斎藤亮彦特任教授、横浜市立大学大学院生命医科学研究科の西澤知宏教授、東京大学大学院医学系研究科の吉川雅英教授、東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻の津本浩平教授、東京大学大学院工学系研究科附属医療福祉工学開発評価研究センターの長門石曉准教授らの研究グループは、クライオ電子顕微鏡法(注1)や分子間相互作用解析法などを用いて、腎近位尿細管細胞に発現するタンパク質、メガリンの立体構造と多様なリガンド(注2)結合様式を解明しました。メガリンは、近位尿細管細胞が様々な物質を取り込み、代謝する機能において中心的な役割を担う分子であり、腎臓病を引き起こす腎毒性物質の「入り口」にもなっています。本研究は、腎臓の生理的な代謝メカニズムの解明とともに、メガリンを介して腎毒性物質が腎臓に取り込まれることを阻害する薬剤の開発に役立つことが期待されます。
本研究成果のポイント
- クライオ電子顕微鏡法や分子間相互作用解析法などを用いて、腎近位尿細管細胞に発現する受容体タンパク質メガリンの立体構造と多様なリガンド結合様式を解明しました。
- メガリンが関わる腎臓の物質代謝機能のさらなる研究に寄与することが期待されます。
- メガリンを介して腎臓に取り込まれ、腎臓病を引き起こす腎毒性物質のメガリン結合を阻害し、腎臓病の発症を防ぐ薬剤(メガリン阻害剤)の開発に役立ちます。
【用語解説】
(注1)クライオ電子顕微鏡法
2017年にノーベル化学賞が授与された電子顕微鏡による構造解析の手法。生体試料を急速凍結して氷の中に埋め込んで、高性能の透過型電子顕微鏡で観察し、3次元で多数の投影像から立体構造を再構築することにより、従来のX線構造解析では困難だったタンパク質などの微細な構造解析を行う。
(注2)リガンド
特定の受容体に特異的に結合する物質。
研究内容の詳細
メガリンの立体構造とリガンド結合様式を解明-腎臓病の新たな創薬に向けて-(PDF:2.0MB)
論文情報
【掲載誌】Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
【論文タイトル】Cryo-EM structures elucidate the multiligand receptor nature of megalin
【著者】Goto S*, Tsutsumi A*, Lee Y, Hosojima M, Kabasawa H, Komochi K, Nagatoishi S, Takemoto K, Tsumoto K, Nishizawa T**, Kikkawa M**, Saito A** (*equal contribution, **correspondence)
【doi】 10.1073/pnas.2318859121
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