“知られざる変異株”を下水から検出!疫学調査では捉えきれないウイルス変異株の出現と変遷を明らかに
金沢大学理工研究域地球社会基盤学系の本多了教授、本学大学院自然科学研究科電気情報工学専攻の阿部貴志教授、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所の有田正規教授、同機構データサイエンス共同利用基盤施設の馬場知哉特任准教授、株式会社AdvanSentinel、ヴェオリア・ジェネッツ株式会社、株式会社クボタによる合同研究グループは、新型コロナウイルスの下水ゲノム疫学(※1)調査において、地域特有の変異株亜系統(サブバリアント)(※2)の出現と変遷を明らかにすることに成功しました。
本研究では、石川県小松市と静岡県浜松市の下水中に含まれる新型コロナウイルスの遺伝子情報を詳細に解析し、臨床検体からは報告されていない地域特有の変異株やその亜系統による有意なゲノム変異パターン(ストップコドン、フレームシフト等)を同定しました。特に、国内で臨床的には未報告であった「XBT」変異株の検出に成功し、新たな変異株による感染拡大の兆候を下水から早期に捉える可能性が示されました。
下水ゲノム疫学によって、変異株の流入時期や定着期間の違い、地域特有のウイルス進化の兆候を亜系統レベルの高解像度で把握できることが明らかになりました。これらの知見は将来、感染症の早期探知や公衆衛生対策の迅速化に貢献することが期待されます。
本研究成果は、5月28日14時(米国東海岸標準時間)に、米国科学誌『PLOS One』オンライン版に掲載されました。
【用語解説】
※1 下水ゲノム疫学(wastewater-based genomic epidemiology)
下水中に含まれる微生物やウイルスのゲノム(遺伝子)情報を解析し、感染症の流行状況や変異株の出現・拡散動態を明らかにすることを目的とする。
※2 サブバリアント(sub-variant)
特定の変異株系統内でさらに細かく分化した変異亜系統。地域固有の変異を反映する場合がある。
研究内容の詳細
“知られざる変異株”を下水から検出!疫学調査では捉えきれないウイルス変異株の出現と変遷を明らかに(PDF:1MB)
論文情報
【掲載誌】PLOS One
【論文タイトル】Dissemination of Local Sub-Variants of SARS-CoV-2 Detected by Detailed Mutation Analysis in Wastewater-Based Epidemiology
(邦題:下水疫学による詳細なウイルス遺伝子変異解析から明らかになった地域特有の新型コロナウイルス変異株亜系統の広がり)
【著者】Ryo Honda,Takashi Abe,Tomoya Baba,Yui Araki,Tomohiro Kuroita,Ryo Iwamoto, Mayo Ito, Nami Okamura, Marie Kenza Yousri, Takashi Tamura, Satoshi Ezaki, Masanori Arita
【doi】10.1371/journal.pone.0317076
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