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【学長から学生の皆さんへ】新型コロナウイルス感染症とその感染予防対策の基礎知識(2020年4月17日掲載)

2020年04月17日 金曜日 お知らせ

新潟大学長 牛木辰男

新型コロナウイルス感染症に立ち向かうために、世界中で様々な対策が行われています。新潟大学もその対応の一環で新学期は非対面型授業で行うことにしました。

これは、現在の新型コロナウイルス感染症に対する日本の戦略が、初期の水際対策(他国からの感染者を封じ込める対策)から、クラスター対策(3密を避けることと、クラスターの追跡調査による感染拡大の封じ込め)に移り、さらに、現在はそれに加えて「人の移動を止める」対策(見えない感染者の移動を最小限に抑える対策)にまで来たことと連動しています。その流れで、4月7日には7都府県に緊急事態宣言が出され、また16日に全国に緊急事態宣言が出されるに至っています。

その背景について、文系・理系を問わず学生の皆さんに正しく理解していただきたいと思い、関連する基礎知識をここにまとめてみました。3月9日と4月6日の私のメッセージと重複するところが多くありますが、ここではその内容をアップデイトするとともに、新入生の皆さんにもよくわかるようにし、一方で、皆さんの発展学修のための関連資料やニュース記事にたどり着くようにしてあります。興味のあるところだけでも結構ですので見てください。

 


第一部 基礎編

第二部 感染対策編

 


第一部 基礎編

ウイルスとは?ウイルス感染症とは?

「ウイルスvirus」は、遺伝情報をもつ核酸(DNAやRNA)がたんぱく質と脂質に取り囲まれた、微小な粒子です。その大きさは100nm(1mmの1万分の1)程度ですから、普通の光学顕微鏡では見えないほど小さいものです。

ウイルスは単独では自己複製ができず、細胞に感染(寄生)して、細胞の中の装置を使うことで増殖することができます。この感染により私たちの体の中の細胞が破壊されて起こる病気が「ウイルス感染症virus infection」です。

ウイルスにはいろいろな種類があり、それぞれの名前がついています。このうち、インフルエンザウイルスinfluenza virusが感染した場合はインフルエンザ感染症といい、ノロウイルスnorovirusが感染した場合はノロウイルス感染症、コロナウイルスcoronavirusが感染したものがコロナウイルス感染症です。それぞれのウイルスは、我々の体の中で、感染しやすい場所・増殖しやすい場所(細胞)があります。例えばノロウイルスは胃腸の細胞に感染しやすいので急性胃腸炎をおこします。コロナウイルスは喉や気道、肺の細胞に感染し増殖しやすいので、咳やのどの痛み、さらに肺炎を起こします。

ウイルスの発見
コロナウイルスの発見 英語
ウイルス感染症 英語

新型コロナウイルス感染症とは?

新型コロナウイルス感染症novel coronavirus infectionは、昨年(2019年)12月に中華人民共和国湖北省の武漢において認識され、短期間で世界的な広がりを見せているウイルス感染症です。世界保健機関(WHO)はこの感染症のことを”COVID-19”と名付けました。また、この感染症に対し2020年3月11日にパンデミック(世界大流行、後述)を宣言しています。日本でも大都市を中心に感染が拡大し、4月7日に7都府県に緊急事態宣言が出され、同16日には全国に緊急事態宣言が出されました。

ところで、ウイルスは感染する動物を選ぶことが多く、同じ種類のウイルスでも人に感染するウイルスと他の動物に感染するウイルスは異なります。コロナウイルスも同様で、これまで人に感染するタイプのコロナウイルスは、その遺伝子配列の違いから6種類知られていました。このうちの4種類は一般の風邪の原因の10-15%を占めるもので、多くは咳がでたり喉が痛かったりしたあとに軽い症状で終わります。残りの2種類は2002年に発生した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」と2012年以降主に中東で発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」の原因ウイルスです。新型コロナウイルスは、これら6種類とは異なる遺伝子配列をもった新しいコロナウイルスです。
一般に人以外の動物に感染するウイルスは人に感染しませんが、まれに動物由来と考えられるウイルスが人に感染することがあります(人獣共通感染症zoonosis)。その場合、感染した人から別の人に、そのウイルスが感染することはありません。しかし、何らかの理由でそのウイルスの遺伝子配列が少し変わることで、人から人に感染する新しいウイルスができあがることがあります。新型コロナウイルスの発生原因はまだわかりませんが、こうした動物由来のコロナウイルスのなかでコウモリ由来のコロナウイルスに近い遺伝子配列をしていることが指摘されています。

WHOのパンデミック宣言
人畜共通感染症

新型コロナウイルスはどのように感染するのか?

新型コロナウイルス感染症は、一般的なコロナウイルス感染(いわゆるウイルス性の風邪)と同じ呼吸器感染症です。したがって飛沫(ひまつ)感染と接触感染の二つが考えられます。

  1. 飛沫感染doloplet infection:感染した人の飛沫(くしゃみ、咳、つば)と一緒にウイルスが放出され、周囲の人がその飛沫を口や鼻から吸い込むことで感染します。会話では1メートル、くしゃみ・咳をすると2-3メートルほど飛沫が飛ぶと言われています。そのため、感染者がマスクをすることで、周囲への飛沫を最小限にすることができます。その点で、感染者ないし感染を疑われる人がマスクをすることは有効です。
  2. 接触感染contact infection:感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後で、その手で周囲の物に触れると、感染者のウイルスがそこに付着します。この後に未感染者がその部位に触ると、その手にウイルスが付着してしまうことになりますが、これに気づかずに手で自分の鼻や目をこすったりすると感染がおこります。大皿から同じ食べ物を食べるような行為はリスクがありますし、不特定の人が触るドアノブや公共のテーブル、机なども、感染のリスクのあるものです。最近では、共用で使うパソコンのマウスやタブレットも感染する可能性があると言われ、さらに不特定の人が触る音楽ゲームでも感染した事例があります。その点で、手洗いをこまめにすることに効果があります。特に、コロナウイルスはアルコール(70%以上)や界面活性剤(いわゆる石鹸)に弱いことが知られているので、アルコール消毒や石鹸による手洗いが有効です。

なお、空気感染(ウイルス粒子そのものが空気中に浮遊して感染すること)は起きていないと考えられていますが、ごく小さな飛沫(直径約5µm以下のエアロゾル)は空中に浮遊して、しばらく漂うことが指摘されています。

感染経路
新型コロナウイルスの感染様式

クラスター感染とは?

日本で発生している新型コロナウイルスの解析から、「クラスターcluster」とよばれる感染の現象がわかってきました。「クラスター」は小規模な集団感染という意味です。これは風通しが悪く人が密集した場所に感染者がまぎれると、一気に感染が広がるという現象です。

すなわち、換気の悪い狭い閉鎖空間に多数の人が近距離で声を出すような状態が続く環境で、感染者がいると、咳やくしゃみがなくても、複数の人に感染がおこります。この時は、接触感染とともに、吐いた息の中に含まれる超微細に霧状の粒子(エアロゾル)が関与することがわかってきています。このエアロゾルが空中を浮遊し、それを口や鼻から吸い込いこんで感染が起こります(エアロゾル感染またはマイクロ飛沫感染)。これが、いわゆる3密(密閉、密集、密着)とよばれる状態によるクラスター感染です。屋内でのサークル活動やコンサート、体育館での運動、複数人での飲食などの自粛要請が必要になるのはこのためです。

厚生労働省クラスター班
クラスター班が提示した対策への概念

新型コロナウイルス感染症の症状は?

新型コロナウイルスに感染した人の多くは、3日~14日ぐらいの潜伏期間(症状を示さない期間)を置いてから発熱(37.5℃以上)と風邪症状(咳、息くるしさ、強いだるさ)が認められるようになります。多くの人は、患者さんに接触してから3~5日ぐらいで最初の症状が出てきます。

一般には、この発熱と風邪症状が1週間前後続き、強いだるさ(倦怠感)を訴える人が多いのが特徴だとされています。インフルエンザにくらべて軽めの症状がだらだら続くことが多いようです。また、早期に「におい」や「あじ」の異常を感じる人もいるようですが、これは必ずしも典型的な症状とはいえません。

新型コロナウイルスの症状は、年齢によって異なりますが、全体でいうと80%ぐらいの人は軽症で終わり、1週間ぐらいで症状が軽快します。その点で、こうした場合は特に治療の必要はなく、自宅で安静にしておくことで十分です。むしろ他人に移さないように、家族や身近な人に移さないように気を付けながら、自宅待機していることが効果的です。

一方で、熱が数日続く場合や、呼吸が苦しくなってきたり、咳が悪化した場合は、肺炎を起こしている可能性がありますので、「帰国者・接触者相談センター」等に相談する必要があります。新潟大学の場合は、まずは保健管理センター(五十嵐:025-262-6244、旭町:025-227-2040)に電話で相談してください。

新型コロナウイルスのもう一つの特徴は、高齢者や基礎疾患のある人で重症化しやすいことで、たとえば中国での発生状況の分析データでは、10~40代では致死率が0.2%程度であるのに対し、50代では1.3%、60代では3.6%、70代では8.0%、80歳以上は14.8%と急速に上昇します。

中国の患者分析
日本での新型コロナウイルス感染症の致死率

新型コロナウイルス感染症に対する検査法は?

新型コロナウイルスに感染しているかどうかを判別するためにはPCR検査を行います。PCRはPolymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の頭文字をとったもので、細菌やウイルスなどの病原体のDNAやRNAを増幅させることにより、その病原体の有無を検出する検査です。もっと早い検査方法として、抗体検査や迅速キットなどが考えられますが、その開発はまだ少し待たないといけません。

新型コロナウイルスのPCR検査では、鼻の奥を専用の綿棒でぬぐって採取した粘液を用います。したがって採取の仕方が悪いと正確な検査ができません。また、採取した粘液を専用の装置にかけて、新型コロナウイルスに特異的なRNAが存在するか、遺伝子を増幅させて調べます。そのために検査には数時間を要します。また、100%確実に判定できるものでもありません。

日本では、新型コロナウイルスのPCR検査は、渡航歴や患者との接触歴などから都道府県が必要と判断した場合にのみ保健所で行っています。

新型コロナウイルスのPCR検査については、日本がその検査数が極端に少ないという議論があります。これはもちろん検査体制の問題もありますが、新型コロナウイルスの感染予防対策の初動のストラテジーが他国と日本で異なっていたことにも関係します。

PCR検査の流れ

新型コロナウイルス感染症に対する治療法は?

新型コロナウイルスにはまだ特効薬や特別な治療薬がありません。そこで現状では、症状に応じた対症療法を行うことしかできません。

すでに述べたように、一般には80%ぐらいの人は軽症で終わり、1週間ぐらいで症状が軽快します。一方で、高齢者や基礎疾患のある人では重症化しやすいことに注意する必要があります。

軽症の場合は、本人も気づかない場合もあり、治療の必要のないものもあります。発熱や咳の症状がある程度出ている場合は、症状を緩和させるための対症療法(解熱剤やせき止め薬の投与や点滴など)を施すこともあります。しかし、基本的には、普通の風邪と同じですので、水分を多めに取り、安静にしていることが重要です。

問題となるのは肺炎です。肺炎が重症化した場合は肺機能が低下して、呼吸困難や呼吸不全に陥ることがあります。こうなると、持続的な酸素投与が必要となるので、人工呼吸器による管理をすることになります。しかしさらに容体が悪化して人工呼吸器で管理できなくなった場合は、「体外式膜型人工肺(ECMO、エクモ)」と呼ばれる生命維持装置を使用しなければならなくなります。このECMOという装置は、肺が全く機能しなくなった際に、体外に血液を出してその中に酸素を直接取り込み、体内に戻す治療法です。若い人でも肺炎を起こしてくることがありますので、注意が必要です。

現在、多様な治療薬の開発やワクチンの開発が急速に進められていますが、これらが実際に使われるようになるまでは1年はかかると思うべきです。

新型コロナウイルス感染症の治療の指針

パンデミックとは?

感染症の流行にはエンデミック、エピデミック、パンデミックの三つの段階があります。

エンデミックendemic:コミュニティや地理的に狭い一定の地域での集団発生で、季節性インフルエンザの流行などがこれに属します。

エピデミックepidemic(流行):特定地域や集団において、予測レベルを超えた感染例の増加が突発的にみられる場合をエピデミックといい、地域や国を越えて広がることがあります。過去の例では重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行がこれに属します。

パンデミックpandemic(世界的大流行):複数の国や大陸で感染が同時期に発生し拡大するものです。もっとも大きなパンデミックは1918~19年に流行したスペイン風邪(インフルエンザ大流行)ですが、2009年のH1N1型インフルエンザの流行も世界保健機関(WHO)がパンデミック宣言をしました。WHOが行うパンデミックの判断は、ウイルスの毒性や各国の医療体制、経済状態などを加味し、死者が続出するなどの危険性が高くなることを指標にしているようです。一般に、パンデミックになると世界経済も混乱を招き、医療崩壊が起こる可能性が高くなります。新型コロナウイルスについては、2020年3月11日にWHOがパンデミックを宣言しました。

パンデミックの歴史 英語

オーバーシュートとは?

世界的に新型コロナウイルスの感染が急速に広がる中、オーバーシュートという言葉が聞かれるようになってきました。これは感染が拡大して「爆発的な患者の増加が起こること」に対して政府の専門家会議が用いた言葉で、一般に英語圏ではこの感染爆発のことはoutbreak(大流行)、explosive rise(急激な拡大)、explosion(爆発的増大)などと呼んでいます。ここでいうオーバーシュートは、ある地域において、初期に感染が緩やかに進むところから、突然指数関数的に感染者数が増加する急速な変化を指しているとも言えます。その結果、毎日歯止めがかからない速度で感染者が増加して、感染の大爆発を導くわけです。このような変化、オーバーシュートをいかに未然に防ぐかが、この時期での感染予防戦略で重要になり、そのタイミングが議論されています。

オーバーシュートに関する専門家会議の提言
西浦博教授のインタヴュー
1918年のスペイン風邪における都市閉鎖の効果

 


第二部 感染対策編

なぜ、感染対策が必要か

新型コロナウイルス感染症は、ウイルスが人から人に感染することにより広がりますから、感染の機会を減らすことが重要です。この感染症は罹患者に接触した後3~14日に発症することが多いことが分かっています。しかも症状がはっきり現れない早期から他人への感染が起こることが知られてきています。したがって、自分が感染していることに気づかないうちに他人にうつしていることが多数起こっていると考えられます。これが、感染を拡大させている一つの原因です。したがって、感染対策としては、
①自分が感染しないように気を付ける
②「もしかしたら自分が感染しているかもしれない」と常に考え、他人にうつさないよう気を付ける。
ことが重要です。以下の内容はすべてそのための対策です。

手洗いとマスク

新型コロナウイルス感染症も、他の感染症と基本的な予防対策は変わりがありません。したがって、まず一般的な感染予防対策に従って、感染しないようにすることが大切です。新型コロナウイルスは、通常のコロナウイルスと同様に主に飛沫感染と接触感染により伝播するので、次のような点に注意が必要です。

1)手洗い:ウイルスで汚染した手指を介して、目や口の粘膜から感染することのないように、手洗いを徹底することが重要です。階段やエスカレータの手すり、つり革、ドアノブ、公共施設のテーブルや机などに感染者が触ったことにより付着したウイルスは、最低でも数時間、場合によっては3日ほど生存すると報告されています。その点で、外出先から戻った時の手洗いの徹底は予防に有効です。また、手洗いは、厚生労働省が勧める「正しい手の洗い方」を実践してください。ピコ太郎の「PPAP-2020-」を参考にしても構いません。

2)マスクの着用:新型コロナウイルス感染対策としてのマスクの効用は以下の2点です。
「もしかしたら自分が感染しているかもしれない」と常に考え、自分のつばを飛ばさないようにする。
 他人のつばを直接顔に浴びないようにする。

したがって、せっかくマスクをしているのに、わざわざマスクを外して話すというのは本末転倒です。顎マスクもまったく意味がなく不潔です。きちんとしたマスクの付け方をしてください。また、マスクは自分や他人が感染者である場合は最も不潔なものですから、マスクの裏表を変えるとか、マスクを触ることは、手にウイルスを付着させる結果ともなり、逆に接触感染の原因になる点も注意する必要があります。出来れば紙マスクは毎日新しい物にし,布マスクも毎日洗濯して清潔なものを使ってください。

なお、キッチンペーパーを使った紙マスクの作り方や、ハンカチをうまく使ったマスクの作り方、本格的に裁縫してつくる布マスクの作り方など、ホームページにいろいろなアイディアが載っていますから、皆さんも自分できる方法でマスクを作ってみるのも面白いと思います。

もしもマスクがない状態で咳やくしゃみをする場合は、手で口を覆わないで、肘でくしゃみを受け止めることが重要です(咳エチケット)。

新潟大学の新型コロナウイルス感染症対策ポスター
厚生労働省の手洗いポスター
マスクの効用 英語

3密を避ける

政府の専門家会議の指摘により、密閉、密集、密接の「3密」を避けるように報じられています。英語では、Three Cs(密閉Closed spaces with poor ventilation、密集Crowded place、密接Close–contact settings such as close-range conversations)といいます。こうした環境では、感染の確率が極めて高くなり、すでに述べたクラスター感染が生じるためです。これは、接触感染と飛沫感染が、この狭い空間で極めて効率に起こっているからです。この点と、これまで起こった屋内運動施設でのクラスター感染などを考慮し、サークル・課外活動は休止としています。

新型コロナウイルス感染が都市部で急速に拡大している事態を受けて、4月7日に政府は東京など7都府県を対象に、法律に基づく「緊急事態宣言」を行いました。これにより、ネットカフェやライブハウス、カラオケの休業要請が出たりしていますが、これも同様な視点からの対策です。当然のことながら、複数人の飲み会は自宅であっても同様なリスクを負っています。首都圏では、ナイトクラブ、バーなどでも患者発生が確認されていることから、飲み会をするのはもちろん、アルバイトも自粛お願いしたいと思います。また、新潟市では音楽ゲーム機からの接触感染が確認されていることから、これらゲーム施設に行くのも避けてください。

厚生労働省の3密ポスター

ソーシャル・ディスタンシング

こうした基本的な感染症の予防対策のほかに、今必要とされているのは、ある一定の距離をとって、人と接することです。この距離のことをソーシャル・ディスタンスsocial distance (社会的距離)といい、その距離をとることを、ソーシャル・ディスタンシングdistancingといいます。これはまさに飛沫感染を避ける距離にあたり、欧米では6フィート、すなわち1.8mといわれています。

このソーシャル・ディスタンスを常に心がければ、当然3密の場所にいるはずもありませんし、飛沫感染もありません。あるのは接触感染ということになるでしょうか。

外国では6フィートが一般的ですが、日本人はマスクを着用している人が多い点では若干有利ですが、最低1mの距離を保って行動してもらいたいと思います。

(ソーシャル・ディスタンス 英語 https://time.com/5819816/coronavirus-social-distancing/
http://www.urbanphysics.net/Social%20Distancing%20v20_White_Paper.pdf#search=’social+distancing’

自宅待機とロックダウン

感染症は人から人に感染することで広まります。したがって、感染の予防の基本は、人と人との接触を避けることにあります。その意味では、上で述べたソーシャル・ディスタンシングは、その一つの方策です。

しかし、人が行動して社会活動をしていると、常にソーシャル・ディスタンスを保つことができるとは限りません。職業によって異なるものの、必ず複数の人と接触し、飛沫感染や接触感染の機会が出てきます。感染の拡大を防ぐ最良の方法は、我々が他人と誰にも接しないことに尽きます。そういう意味で、自宅待機stay homeの要請が出るわけです。

これを地域レベルで考えれば、感染地区の人がその地域以外に流出しないことが、他の地域に感染を広げない最良の策となります。このように、対象となる地域の人の移動を制限して都市封鎖をすることをロックダウンlockdownと呼んでいます。

今回の新型コロナウイルス感染では、欧米の多くの都市がロックダウンをしました。その内容は、都市活動を完全にストップし、人々は外出禁止となっています。たとえばフランスでは、外出許可証と身分証明書をもってのみ、1日1回、1時間以内、自宅から1km以内しか外出が認められていません。破った場合は135ユーロ(1万6000円ぐらい)の罰金を支払うことになります。

日本では4月7日に7都府県に、16日に全国に緊急事態宣言が出されました。しかし、日本の法律の作りから、厳しいロックダウンをすることができません。したがって、政府や各自治体からさまざまな自粛の強い要請という形で、呼びかけられています。しかし、現在の感染の拡大の状況は極めて深刻であり、それぞれの自粛の要請を達成できるかが、今後日本での感染状況に大きく影響することを真摯に考える必要があります。

フランスのロックダウン

日常生活の注意とこころのケア

以上、深刻な状態にある新型コロナウイルス感染症の拡大とその予防について、皆さんが自身で考えるための基礎知識をまとめてみました。

繰り返しになりますが、新学期においては、外出自粛を基本とし、外出する必要があるときは、以下の点に気を付けて過ごしてください。
①不用意に人に接触しないこと。握手やハイタッチはやめてください。
②人と安全な距離を保つこと(1~2メートル)。並ぶ時も前後と距離を置いてください。
③ドアのノブ、テーブルや机など、公共で物を触った後は必ず手洗いをすること。また、その手で自分の顔に触れないようにすること。

トイレに行った後も必ず手洗いをしてください。新型コロナウイルスの感染した場合、便からもウイルスが検出されることがわかってきています。したがって、ウイルスが付着した手で、鼻や口をこすってしまうことで感染する危険性があります。

外出を自粛していると、生活のリズムが乱れがちになりかねません。バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠、に心がけ、規則正しい生活をすることが大切です。不要不急の外出は避けてほしいと思いますが、当然のことながら、食品や必要な日用品の買い物は、上記の感染予防に気を付けてくれれば問題ありませんし、晴れた日に、人のまばらな公園や近くを散歩するのは大いに結構です。

そのときも、外のものに触った手で自分の顔を触らないこと、帰ってきたら手洗いをすること、そんなちょっとしたことを習慣つければ、自分の身を守りながら、楽しく過ごすことができるでしょう。

自宅待機の状態では、孤独を感じるようなこともあるかもしれません。しかし決して一人ではないと思ってください。今は直接対面しなくても、家族や友人電子メールや電話、あるいはソーシャルメディアを通じて、連絡を取り合うことができます。その点で、何か心配なことがあればいつでも信頼できる人や、相談してください。

WHO メッセージ
新型コロナウイルス感染症とこころのケア

新型コロナウイルス感染症に対する偏見や差別の防止

毎日インターネットには、大量かつ多様なニュースが流れており、その中にはフェイクニュースもたくさんあります。正しい知識の欠如と、社会にあふれる流言や誤報により、偏見や差別がでてくることに注意してください。すなわち、
・新型コロナウイルスに感染した人への偏見や差別
・新型コロナウイルス感染症に関わる医療従事者への偏見や差別
などです。前者については、プライバシーが徹底的に侵害され、また後者ではたとえば、医療従事者の子供が学校で「バイキン」と呼ばれる例などです。また、宅配業者への心ない言動などもあるでしょう。

これらの偏見や差別を防ぐためには、正しい知識を持つことがもっとも重要です。

感染者は犯罪者ではありません。新型コロナウイルスは誰でもかかる可能性があり、また多くの人は軽症で、かつ治る病気ですから、ある意味では普通の風邪やインフルエンザと同じです。お互いがお互いをリスペクトして、それぞれが感染予防・対策の基本を守ればいいことです。すでに述べましたが、感染予防の基本は飛沫感染と接触感染を避けることで、それは普段の風邪やインフルエンザの予防と変わりがありません。そうであれば、偏見や差別の根拠がないことがわかるでしょう。

常に正しい知識を得ることを心掛け、冷静に対処してください。そして、いたずらにおびえたり、逆に危機感をあおったり、他人に偏見をもって接することのないようにお願いします

(アメリカ心理学会記事 英文 和文

―子供向けの新型コロナウイルス感染症対策動画(マスクの作り方付き)―

https://youtu.be/WRhp0ZGVh0U

―もっと深く知るためにー

  1. 世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルスについてのQ&A(英語)
  2. Johns Hopkins大学の世界の感染状況マップ(英語)
  3. 厚生労働省の新型コロナウイルス感染症ページ(日本語)
  4. 日本経済新聞の新型コロナウイルス感染世界マップ(日本語、英語)
  5. Financial Timesの世界の新型コロナウイルス感染拡大情報(英語)
  6. アメリカでの新型コロナウイルスに対する医療現場の実際
英文メッセージはこちら
新型コロナウイルス感染症に関する対応ページへ

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