よく噛めない男性はメタボになりやすかった-4年間の追跡調査により世界で初めて判明-
本学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野の小野高裕教授、大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野の池邉一典教授、国立循環器病研究センター健診部小久保喜弘特任部長らの研究グループは、無作為抽出した都市部一般住民を対象に、規格化された方法で測定した「咀嚼能率」(ものを細かく噛む能力)とメタボリックシンドローム(メタボ、注1)罹患との関係を探る研究を行なってきました。このたび、50-70歳代の男女599人を平均4.4年間追跡した結果、男性においては咀嚼能率が低い場合メタボの新規罹患率が2.2倍高く、特に血圧高値、脂質異常、高血糖のリスクが高いことが明らかになりました。興味深いことに、こうした傾向は女性では見られませんでした。つまり、「よく噛めない」ことは生活習慣病リスクになりますが、そこには性差があることに注意が必要と言えます。
本研究成果のポイント
- 無作為抽出した50-70歳代の都市部一般住民599人を4.4年間追跡したこと。
- 「ものを細かく噛む能力」を客観的な方法で測定したこと。
- その結果、他のリスク因子の影響を調整しても、男性においてのみ、「よく噛めない」ことがメタボのリスク因子となることを明らかにしたこと。
【用語解説】
(注1)メタボリックシンドローム(メタボ):
血圧高値、高血糖、脂質異常、肥満などの生活習慣病が重なった状態を呼び、日本人の死因の第2位を占める動脈硬化性疾患(脳卒中、心筋梗塞など)に繋がる病態と定義され、その予防を目的に40歳台以上を対象とした特定健診が実施されている。
研究内容の詳細
よく噛めない男性はメタボになりやすかった-4年間の追跡調査により世界で初めて判明-(PDF:963KB)
論文情報
【掲載誌】Frontiers in Cardiovascular Medicine
【論文タイトル】Lower masticatory performance is a risk for the development of the metabolic syndrome: the Suita study
【著者】Shuri Fushida, Takayuki Kosaka, Michikazu Nakai, Momoyo Kida, Takashi Nokubi, Yoshihiro Kokubo, Makoto Watanabe, Yoshihiro Miyamoto, Takahiro Ono and Kazunori Ikebe
【doi】10.3389/fcvm.2021.752667
本件に関するお問い合わせ先
広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp
他のニュースも読む
-
研究成果 2024年05月14日
新規結核ブースターワクチン候補分子の提案-結核菌生来の翻訳後修飾を有する蛋白質の優れたインターフェロンガンマ誘導性-
-
研究成果 2024年04月26日
指定難病「視神経脊髄炎」の炎症を正負に制御する免疫ダイナミクスを発見-好中球とT細胞制御を目指した新たな治療法に道-
-
研究成果 2024年04月26日
難治性卵巣がんの治療抵抗性を引き起こす細胞間の協調作用を発見~「がん関連線維芽細胞」を標的とした新しい治療法開発に期待~
-
研究成果 2024年04月15日
糖尿病性神経障害発症における細胞外基質の役割を解明-コンドロイチン硫酸の発現調節による症状軽減化と新たな治療戦略への期待-