植物が切断されても、傷口を修復してつなげる仕組みを解明 オーキシンが再生遺伝子を活性化して細胞塊形成 接ぎ木など園芸や食料増産に期待
奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域の池内桃子特任准教授(理化学研究所環境資源科学研究センター客員研究員、2022年3月まで新潟大学理学部准教授)、新潟大学理学部の田中隼人(研究当時学部4年生)、帝京大学理工学部バイオサイエンス学科の朝比奈雅史准教授、理化学研究所環境資源科学研究センターの杉本慶子チームリーダー(東京大学大学院理学系研究科教授)らの研究グループは、モデル植物のシロイヌナズナを使い、葉と茎をつなぐ葉柄という棒状の器官を切り離したときに生じる2つの切断面について、それぞれ傷口修復のためのカルス(細胞塊)を形成するものの、両者の活性は著しく異なるという再生力の機構に関わる重要な現象を発見しました。活発な方の切り口には、成長を促進する植物ホルモンのオーキシンが多く蓄積し、カルス形成の遺伝子を働かせる転写因子 (WOX13) を特異的に活性化しているという原因の一端を解明しました。今後、効率的な接ぎ木技術の開発など農業や園芸分野への応用展開が期待されます。
この研究成果は、日本植物生理学会が発行する国際学術誌である「プラント・アンド・セル・フィジオロジー」誌のオンライン版に2022年10月20日に公開されました。
【用語解説】
オーキシン:植物の個体発生や形態形成、細胞分裂制御において重要な役割を果たす植物ホルモンの一種。
カルス:器官の切断やホルモン処理などの刺激に応答して形成される細胞の塊のこと。
研究内容の詳細
植物が切断されても、傷口を修復してつなげる仕組みを解明 オーキシンが再生遺伝子を活性化して細胞塊形成 接ぎ木など園芸や食料増産に期待(PDF:472KB)
論文情報
【掲載誌】Plant And Cell Physiology
【論文タイトル】Auxin-induced WUSCHEL-RELATED HOMEOBOX13 mediates asymmetric activity of callus formation upon cutting
【著者】Hayato Tanaka, Naoki Hashimoto, Satomi Kawai, Emi Yumoto, Kyomi Shibata, Toshiaki Tameshige, Yuma Yamamoto, Keiko Sugimoto, Masashi Asahina, Momoko Ikeuchi
【doi】10.1093/pcp/pcac146
本件に関するお問い合わせ先
広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp
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