芽を生み出すかどうか、植物カルス細胞の分化を運命づける因子をつきとめた 植物の器官再生能力を制御する新たな仕組みを発見 〜農作物の組織培養効率を飛躍的に改善する技術開発に期待〜
奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域の池内桃子特任准教授(理化学研究所環境資源科学研究センター客員研究員)と本学大学院自然科学研究科の小倉菜緒(研究当時博士前期課程;奈良先端大特別研究学生)らは、理化学研究所環境資源科学研究センターの杉本慶子チームリーダー(東京大学大学院理学系研究科教授)、東京医科歯科大学難治疾患研究所ゲノム機能情報分野の二階堂愛教授(理化学研究所生命機能科学研究センターチームリーダー)、中部大学の鈴木孝征教授らの研究グループと共同で、さまざまな器官の細胞に分化し得る多能性(注1)を持ったカルス(注2)細胞から芽を生み出す効率を劇的に向上させる新しい方法を発見しました。植物の器官再生能力を制御し細胞分化を運命づける因子(タンパク質)をつきとめ、この因子を調節することにより高効率で新たな芽を生み出す道を拓いたものです。本研究の成果を農作物に応用することで、遺伝子工学に欠かせない組織培養技術の効率を飛躍的に改善でき、食糧の安定供給に貢献することが期待できます。この研究成果は、AAAS(アメリカ科学振興協会)の学術誌「Science Advances」オンライン版に2023年7月8日(日本時間)に掲載されました。
【用語解説】
注1 多能性:さまざまな器官になることができる潜在的な能力のこと。
注2 カルス:器官の切断やホルモン処理などの刺激に応答して形成される細胞の塊のこと。
研究内容の詳細
芽を生み出すかどうか、植物カルス細胞の分化を運命づける因子をつきとめた 植物の器官再生能力を制御する新たな仕組みを発見 〜農作物の組織培養効率を飛躍的に改善する技術開発に期待〜(PDF:1.0MB)
論文情報
【掲載誌】Science Advances
【論文タイトル】WUSCHEL-RELATED HOMEOBOX 13 suppresses de novo shoot regeneration via cell fate control of pluripotent callus
【著者】NAO OGURA, YOHEI SASAGAWA, TASUKU ITO, TOSHIAKI TAMESHIGE, SATOMI KAWAI, MASAKI SANO, YUKI DOLL, AKIRA IWASE, AYAKO KAWAMURA , TAKAMASA SUZUKI, ITOSHI NIKAIDO, KEIKO SUGIMOTO, AND MOMOKO IKEUCHI
【doi】10.1126/sciadv.adg6983
本件に関するお問い合わせ先
広報事務室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp
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