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学長メッセージ

令和5年度入学式 学長告辞

新入生の皆さん、新潟大学へのご入学、誠におめでとうございます。新潟大学を代表してお祝いを申し上げます。また、新入生の皆さんのこれまでを支えてこられたご家族の皆様、関係者の皆様にも、心からお慶びを申し上げます。

この度、新潟大学に入学を認められたのは、学士課程2,399名、大学院修士課程590名、大学院博士課程122名、大学院専門職学位課程21名、養護教諭特別別科51名、の総計3,183名です。

新潟大学の入学式は例年、この朱鷺メッセでご家族もお招きして開催していましたが、新型コロナウイルス感染症COVID-19の世界流行により、二年間は開催できず、昨年度は朱鷺メッセでの開催はできたものの、ご家族の皆様にはオンライン参加とさせていただきました。ようやく、今年度は人数制限こそさせていただきましたが、このようにご家族を交えた全学合同の入学式を開催でき、主催者側としても大変うれしく思っております。また、これまでの経験を生かし、ご来場が難しいご家族・関係者の皆様にはオンラインで参加いただけるように、ハイブリッド形式にさせていただきました。

さて、学部入学生の皆さんは、この3年間、まさにコロナ禍での高校生活を送ることになり、さまざまな不安を抱えた日々だったのではないでしょうか。そうした厳しい日々を乗り越えて、さらにコロナ禍のまだ収まらない大学入試を勝ち抜き、晴れて入学を果たされたわけですから、さぞかしホッとされていることでしょうし、待ち望んだ大学生活に向けて喜びと期待がいっぱいのことと思います。また、大学院生の皆さんも将来の夢を叶えるために、さまざまな期待を胸にこの場にいることと思います。

コロナ禍もようやく出口が見えてきて、世間ではマスクの着用についても基本的には個人の判断にゆだねることになってきています。スポーツ観戦などでの声を出した応援も可能になり、大学での授業も対面授業を原則とする方向に戻りました。これから、さらにさまざまな制約が取れていくと思います。これからの大学生活が彩りのあるものとなることを心から祈るものです。

一方で、コロナ禍が収束したわけでもありません。直近では、COVID-19の抗体保有率は日本では全国で42.3%だという厚生労働省からの報告がありました。この抗体保有率というのは、ワクチンでできた抗体のことではなく、自然感染をした人の割合を知るためのものです。したがって、この3年間で国民の4割程度がすでに感染したということを示していることになりますが、欧米での抗体保有率が8割またはそれ以上であることと比べると、日本の感染予防対策がよく機能してきたことがわかります。一方で、まだ抗体保有者の割合が少ないことから、今後の対策についても、日本に合ったコロナ禍の終わらせ方があるのではないかと思います。

たとえば基礎疾患を持った方や、高齢者においてのリスクがなくなったわけではありません。病院や介護施設はもちろんのこと、満員電車や換気の悪い場所でのマスクの着用などの配慮はまだ必要でしょう。自分のまわりの混雑具合や、COVID-19の感染状況、周囲にどんな人がいるかなどを考えた判断をしていただきたいと思いますし、特に、自分が感染した場合のリスクだけでなく、他人への配慮を忘れないことが、もっとも大切なことだと思います。そうした他者に優しい、他者への配慮ができる大学生になっていただきたいと思います。

さて、話が変わりますが、新潟大学に入学される皆さんに、私から新潟大学の理念について少しお話したいと思います。

新潟大学の理念は「自律と創生」です。文字通り「自律」は自分自身で立てた規範に従って行動すること、「創生」は新たなものを作り出すことを言います。新潟大学は、この「自律と創生」の理念のもとで皆さんに接しています。それは、自分の規範を自ら立てて物事を考え、他人の真似ではなく自分の見たものをもとに、物事を判断する力を養ってもらう、という理念です。

社会は予測できない出来事や予測が難しい出来事に満ちています。まさにコロナ禍はその代表だと思いますが、地震や天災もそうでしょう。また、ウクライナ情勢の悪化による世界の構図の大きな変化や、世界経済への影響も、多くの人には予測が困難な出来事だったのではないでしょうか。

さらに、現代社会では、克服しなければならない課題も次々に浮き彫りになってきています。地球温暖化、格差拡大、貧困といった地球規模の課題にどう取り組むかが問われており、そのアクションが求められる時代です。そして、こうした時代の変化は、どんどんスピードを増しているようにも思えてきます。私たちは、こうした予測の難しい時代、課題に満ちた時代をどのように生きていけばよいのでしょうか?

それは、今ほど話した、「自律と創生」の精神を養い、自身や社会に対するアンテナを高くすることだと思います。すなわち、他人の受け売りや真似ではなく、自分自身で物事をよく見聞きし、事実を自分の目で見極めて、正しく判断していく、そういう習慣を持つことです。そして、それは、新潟のシンボルでもある柳のように、柳の枝のようにしなやかで折れない「真の強さ」を持つことでもあります。入学にあたり、ぜひこのことを胸に刻んでいただきたいと思います。

これからの社会では、コロナ禍において私たちが経験したことと、そこで得た知識を生かしながら、さまざまな秩序を再構築していく必要があります。皆さんの未来は、そうした新しい秩序が築かれた社会の先にあります。新潟大学での大学生活を送る中で、「自律と創生」の理念を忘れずに、皆さんの好奇心の翼を最大限広げながら、どうか未来の社会に立ち向かうための力を養ってください。

新潟大学は大規模総合大学です。さまざまな学問分野のエキスパートが集まった「知の拠点」です。したがって、皆さんは自分の専門分野はもちろんですが、そこに限らない様々な学びを得ることができます。また、机から離れたフィールドワークもあるでしょう。さらに、これからは海外留学という機会もたくさん出てくるでしょうし、コロナ禍の経験を生かしたオンラインとリアルが融合したさまざまな活動も進んでいくでしょう。是非とも、大学にいる間に、多様な経験と、さまざまな人との出会いをしていただきたいと思います。それが必ず皆さんの将来の宝となり、大きな力になるはずです。

また、大学の学びにおいては、高校までの試験問題のような、答えのあるものばかりではなくなります。むしろ、答えのない課題や問題に出会うことが多いでしょう。しかし、未来の社会に立ち向かう力は、そうしたことに真摯に向き合うところから始まります。答えのない問題に挑戦する勇気と、それを克服する根気を大学生活の中で養ってもらいたいと思います。

最後に、新潟大学の将来ビジョンについても少しお話しします。新潟大学では、直近の未来である2030年に向けて、新潟大学が果たすべきミッションを定めています。それが、「未来のライフ・イノベーションのフロントランナー」となることです。
ここでいう「ライフ・イノベーション」とは、単に「医療・健康・福祉分野」に留まらず、21世紀を生きる我々の「生命」、「人生」、「生き方」、「社会の在り方」、「環境との関わり」と、それらの土台となる「地球」や「自然」についての新たな価値と意味を生み出すための革新を指しています。すなわち、新潟大学が目指す「ライフ・イノベーション」は、私たち人類を幸福にするための革新のことです。このように、新潟大学は、未来の人間社会に資する研究と、未来の社会に活躍する人材の育成を目指しています。

どうか、入学に際して、新潟大学の理念を胸に刻み、そしてこの新潟大学の将来ビジョンを共有して、学生生活を有意義に過ごしていただきたいと思います。つねに知的好奇心を持ちながら、学ぶ事を忘れないで、入学時に抱いた夢を忘れずに、その夢に向かって進んでいってください。

改めて、皆さん、入学まことにおめでとうございます。心からお祝い申し上げます。そして、卒業時に、大きく成長した皆さんにお会いできることを楽しみにし、私の告辞とします。

令和5年4月3日
新潟大学長 牛木辰男