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学長メッセージ

令和5年度卒業式 学長告辞

卒業生、修了生の皆さん、卒業、修了まことにおめでとうございます。

本日ここに皆さんとご家族をお迎えして、このような形で全学合同の卒業式を挙行することとなりました。今年度の学部卒業生は2,222名、大学院修了生は683名、学位論文提出者は7名、養護教諭特別別科 修了生は51名です。新潟大学を代表して、まずは皆さんに心よりお祝いを申し上げます。

今、皆さんは、卒業のこの日を迎え、たくさんの思い出が去来し、万感胸に迫る思いがあることでしょう。とくに学部卒業生の皆さんの多くは、4年前、まさにCOVID-19のパンデミックという、未曾有の出来事が始まったその時期に、大学受験となり、合格と入学の喜びまでも、押し寄せるコロナ禍の第一波と緊急事態宣言の中でかき消されて、全学合同入学式も中止となりました。そして入学した新学期も2週間遅れとなり、しかもすべての授業が非対面で行われるという、想像もしていなかった大学生活のスタートでした。また、医学部医学科や歯学部歯学科の皆さんにしても、それまでの2年間弱の普通だと思っていた大学生活の日常が、突然閉ざされてしまいました。

あれからはや4年が経ちました。いや、ようやく4年が経ったというべきかもしれません。この間、私たち教職員もこの大きな試練の中で、皆さんに少しでも豊かな学びの場を提供しようと努力してきました。私もホームページのメッセージ等で皆さんにできるだけ正しい情報を伝えながら、安全安心の環境を確保するために模索し、また限られた行動環境の中でも、皆さんの大学生活が実りあるものとなるように最大限の努力をしてきました。しかし、未曾有の出来事ですから、誰ひとりとして正確な予測ができたわけではありません。まさに人類全体にとっての大きな試練でした。

私も手探りの4年間でした。ようやく昨年から日常の生活が戻ってきて、ほっとしているところですが、過ぎ去ってみて、皆さんのこの4年間はどうだったでしょうか。そして、皆さんは、その中で何を学んだでしょうか?
皆さんはコロナ禍において、さまざまな気づきがあったのではないかと思いますが、その中でも多くの人が強く感じたのは、「人のつながりの大切さ」ではないかと思います。陸の孤島のようなオンラインだけの生活となったことで、私たちは家族や友人だけでなく、実に多様な人たちとつながり合っていたのだということに気づかされました。それは、気の置けない仲間と会って、たわいのない話をすることの大切さであったり、ありふれた日常でのなにげない人とのふれあいの大切さでもありました。

本来、大学というところは、多様な人々が学びのために集うところで、大学生活はその多様な人と出会い、感化し合い、そこでのコミュニケーションを通して成長していく貴重な時間を過ごすところでもあります。その時間と空間が制約されたことは本当に残念なことでしたが、そのことを強く自覚することができたということには、大いに意味があったのではないかと私は思います。そして、一方で、皆さんがそのような状況下においても、皆さんの知的好奇心を最大限に発揮して、その時にしかできない豊かな時間を見つけてくれたのではないかと私は思っています。

さて、4年前は朱鷺メッセでの入学式が中止となったことから、私からの皆さんへのメッセージはホームページに掲載しました。その時に新潟大学の理念である「自律と創生」について触れましたが、覚えている人はどれぐらいいるでしょうか。
「自律と創生」の「自律」は、文字通り、自分自身で立てた規範に従って行動すること、そして「創生」は新たなものを作り出すことです。折に触れて話してきたつもりですが、新潟大学は、この「自律と創生」の教育理念のもとで皆さんに接し、新潟のシンボルでもある柳のように、あの柳の枝のようにしなやかで折れない「真の強さ」を持った人材が育つことを願っています。したがって、新潟大学で学んできた皆さんは、他人の真似ではなく、「常に自分で自分の規範を立てる習慣」を養ってくれたと私は信じています。

コロナ禍は社会にも大きな変化をもたらしました。その一つはデジタルトランスフォーメーションで、テレワーク、オンライン会議を始めとしたさまざまなDX化が加速しました。さらに、最近では、生成系AIという、これまでの識別系AIとは異なる技術も急速に発達してきています。これから皆さんが活躍する社会は、AIやビッグデータ等の新たな技術が築くサイバー空間と、現実のフィジカル空間が融合した新しい世界がどんどん築かれていくことでしょう。
社会のグローバル化も進んでいます。自然科学と人文・社会科学の「知」の融合の重要性もクローズアップされてきています。こうしたさまざまな社会改革がますます進み、それによって新しい未来が創造されていく時代になるでしょう。その一方で、今回のコロナ禍のような事態や予期せぬ災害等に見舞われることも、きっと何度もあるに違いありません。実際に、今年の元日には、大きな能登半島地震が起こり、新潟市も液状化が起きるなどの被害が出ました。
国際情勢も変化しています。温暖化に代表されるように地球環境も変化しています。このように社会も地球もそして宇宙も日々変化しており、未来を正確に予測することはある意味では困難です。しかし、そのような中で、もしも未来を切り拓くことができるとすれば、それは「科学」であり「学問」であると私は思います。

学問は未来を予測する精度を高めることができます。そして、未来に立ち向かうためには「予測する努力」をすることが極めて重要です。そんな意味も込めて、新潟大学はコロナ禍でしたが、直近の未来である2030年に向けたビジョンを3年前に策定しました。また、そこに向けて新潟大学が果たすべきミッションを、「未来のライフ・イノベーションのフロントランナー」となることと定めました。
ここでいう「ライフ・イノベーション」とは、単に「医療・健康・福祉分野」に留まらず、21世紀を生きる我々の「生命」、「人生」、「生き方」、「社会の在り方」、「環境との関わり」であり、それらの土台となる「地球」や「自然」についての新たな価値と意味を生み出すための革新です。すなわち、新潟大学が目指す「ライフ・イノベーション」は、人類を幸福にするための革新のことです。
これは、卒業・修了する皆さんと共有できるものだと思います。その点で、皆さんが、新潟大学を離れても、このミッションを共有し、未来のライフ・イノベーションのフロントランナーを目指して活躍されることは大変うれしいことです。

最後になりましたが、母校との絆について話します。皆さんは新潟大学を卒業・修了しますが、どうかいつまでも母校との絆を忘れずにいてほしいと思います。新潟大学は、旧制新潟医科大学と旧制新潟高等学校を母体とし、師範学校、高等工業学校、農林専門学校が統合して、1949年に新制の国立大学である新潟大学になりました。したがって、今年新潟大学として75周年を迎えます。それに向けて、この4月からは記念式典だけでなくさまざまなイベントも計画されています。せっかくの機会でもあり、これをばねにして未来の新潟大学がより良くなるように、大学のキャンパスの整備も進めています。ぜひ、皆さんも、未来の新潟大学がより良くなり輝くように、同窓生として見守り、さまざまな形で盛り立てていただきたいと願っています。

皆さん、新潟大学は皆さんの母校であり故郷です。新潟大学で学んだ誇りをもって、未来への一歩を踏み出してください。新潟大学はこれからも皆さんを見守っています。そして、皆さんが、社会に出てから大いに活躍されることを期待しています。

そのために、卒業・修了後もどうか新潟大学の理念「自律と創生」の精神を忘れずに、知的好奇心をいつまでも持ち続け、学ぶことを忘れずに前に進んでください。どこにいても新潟大学と絆を結びながら、未来のライフ・イノベーションのフロントランナーとして、さまざまな方面で活躍されることを心から願っています。そして、皆さんの未来に幸多きことを祈り、私の告辞とします。

本日はまことにおめでとうございます。

令和6年3月25日
新潟大学長 牛木辰男