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学長メッセージ「秋季入学生の皆さんへ」2020年10月

学長メッセージ「この秋に入学する皆さんへ」

秋季入学生の皆さん、ご入学を心よりお祝い申し上げます。

いつもであれば、皆さんに集まっていただき、秋季入学式を五十嵐キャンパスの中央図書館ライブラリーホールで開催するのですが、今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防対策のため、式典は中止としました。ご入学の皆さんの晴れがましい姿に接してお祝いできないのは大変残念ですが、代わりに、このような形で私から皆さんにメッセージを送ることにします。

自律と創生

新潟大学の理念は「自律と創生」です。文字通り、「自律」は自分自身で立てた規範に従って行動すること、「創生」は新たなものを作り出すことです。入学にあたり、この言葉をぜひ皆さんの胸に刻んでください。

新潟大学はこの「自律と創生」の理念のもとで、皆さんが「常に自身の規範を自ら立てて物事を考える習慣」を養ってもらうことを願っています。すなわち、自分自身で物事をよく見聞きし、事実を自分の目で見極めて、判断していく、そういう習慣です。

コロナ禍から学ぶこと

今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は昨年末に中国の武漢で発生し、あっという間に世界に広がってパンデミック(世界大流行)となりました。思いもかけぬ大きな出来事が起きたと感じている人が多いことでしょう。

しかし、このことは本当に予測できない出来事だったのでしょうか?
実は、今回のコロナ禍は私たち多くの人には極めて突然の出来事でしたが、専門家の中では、こうした大流行についてかねてから警鐘が鳴らされていました。そもそも、感染症の世界大流行は人類の歴史の中で何度も繰り返されてきた出来事です。たとえば中世ヨーロッパを襲ったペスト(黒死病)は人口の3分の1が死亡したといわれています。また、ちょうど100年前には「スペイン風邪」と呼ばれる新型インフルエンザの大流行がありました。「スペイン風邪」では、当時の世界の人口約18億人の3分の1の6億人ほどが感染し、数千万人が死亡したと伝えられています。このように、感染症の大流行は、大地震などの天災と同様に、必ず起こりうる出来事の一つであり、人類が乗り越えなければならない、大きな試練の一つということができます。
とはいえ、100年に1度のような出来事の中に、今私たちは立たされています。このコロナ禍という試練の中で私たちは何を学びとり、何をすべきでしょうか?この問いは入学試験問題のように一つの正答があるわけでもないでしょうし、あるいは答えそのものがないものかもしれません。しかし考えることが大切です。
たとえば歴史を振り返るなら、14世紀のペストの大流行はヨーロッパの封建社会の構造変化を加速させたといわれており、それがルネサンスという新たな時代に導いたという人がいます。スペイン風邪については、ちょうど第一次世界大戦の最中の大流行で、この大戦の終結を早めるとともに、その後の世界経済の大きな変化をもたらしたのでした。このように過去の感染症の大流行は、社会や経済の枠組みを大きく変えるきっかけになってきたということも一つの視点です。

皆さんも、コロナ禍の中にいて、何かが大きく変わろうとしていることを感じているのではないでしょうか。ぜひ、そのことを、この機会に皆さんの頭の中で少し考えてみてください。コロナ禍で初めて気づいたこと、コロナ禍で学ぶことが、何かきっとあるはずです。

未来を見据える

日本が提唱する未来社会のコンセプトにSociety 5.0という言葉があります。人類がまず狩猟社会(1.0)に始まり、第2の農耕社会(2.0)、第3の工業社会(3.0)、第4の情報社会(4.0)を経て、その先に見えてきた第5の新たな社会をSociety 5.0というものです。サイバー空間とフィジカル空間(現実空間)の高度な融合により築かれるものとも説明されています。そして、この未来社会では、コンピュータ(AI)の能力が2045年に人間の能力を追い抜くと予想されたり、それまでには、リモートワークが進んで、半数近くの仕事がAIにとって代わられるという、雇用大崩壊時代到来の予測もありました。

日本や世界がこうしたこれまでの予測の方向に向かうのかどうか、それはまだわかりませんが、このコロナ禍により、私たちが想定していたよりはずっと早く、しかも大きく社会の変化が始まったのではないでしょうか。ちょうど、坂を転がりだした小石のように何かが動き始めていて、それはもう止めることができない。そして、コロナの後は前とはすっかり違った社会になるのでは?と、そんな予感と確信です。

皆さんがこれから生きていく時代は、このように複雑で予測できない出来事がたくさん出てくると思います。それを乗り切るためには、ますます人類の英知を結集して解決することが必要となります。そんな、時代を生き抜くための知力を養うことが、現代の大学の役目だと私は思っています。

有意義な大学生活を

大学は「知の拠点」だといわれたりします。それは、学生の皆さんや教員が、学問を愛し、思索し、学び合い、そこから未来を築く知恵が生まれる場であるからです。新潟大学は大規模総合大学です。さまざまな学問分野のエキスパートが集まっています。ぜひ、新入生の皆さんは、入学というこの節目に抱いている夢や志を忘れることなく、新潟大学という「知の空間」を活かして、在学中に多くのことを学んでもらいたいと思います。そして、新潟大学の理念である「自律と創生」を胸に、積極的にさまざまなことに取り組み、柳の枝のようにしなやかで折れない「真の強さ」を身につけてください。皆さんが社会にはばたくとき、それが大きな力になると私は信じています。

今はコロナ禍の中で講義や実習にはまだまだいろいろな制約があります。期待していた大学生活とは異なる現実がもうしばらく続くことになるかと思います。困ったことがあったり、ストレスや不安を感じたら、いつでも信頼できる人に相談してください。家族や友人、もちろん大学の指導教員や学務係の人でもかまいません。決して一人ではないと思ってください。そして、こうした中にあっても、皆さんの知的好奇心を最大限に発揮して、多くのことを学び、実りある日々を送ってください。

やまない雨がないように、コロナ禍もやがて収束していきます。卒業時に、さらに何倍にも大きく成長して輝いている皆さんにお会いできることを楽しみにしています。

令和2年10月

新潟大学長 牛木辰男

英語・中国語版学長メッセージ

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