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過去の学長メッセージ

令和4年度卒業式 学長告辞

本日ここにお集まりの卒業生の皆さん、修士・博士 修了生の皆さん、そして養護教諭特別別科 修了生の皆さん、卒業・修了まことにおめでとうございます。今年度の学部卒業生は2,282名、大学院修了生は676名、学位論文提出者は2名、養護教諭特別別科 修了生は48名となりました。新潟大学を代表して、皆さんに心よりお祝いを申し上げます。

また、本日、この卒業式にご出席のご家族の皆様、オンラインで視聴されているご家族の皆様、関係の皆様にも、心よりお慶びを申し上げます。

2019年の12月に中国武漢で最初に報告され、その後急速に世界に広がってパンデミック、すなわち世界流行を引き起こした新型コロナウイルス感染症COVID-19は、4年目にしてようやく共存への出口が見え始めています。マスクの着用に関する政府の指針が出され、卒業式においてもマスクの着用を求めないという文部科学省の通知が出されたのはご存じのことだと思います。その中で、本学の卒業式をどのようにすべきかを慎重に検討しましたが、最終的には、このように4,000人を超える大規模の式典を挙行するにあたり、ある程度の対策を講じさせていただきました。すなわち、感染予防対策の見地から、収容人数の制限をやや厳しくさせていただき、参加者の皆さんご自身での健康状態の確認と会場への入退室時のマスク着用をお願いしました。

とはいえ、卒業式は、卒業生・修了生の皆さんとご家族の皆様にとって、人生の節目となる、思い出に残る大切な行事です。できる限りの配慮と工夫をしたつもりですので、どうぞご理解とご寛容をいただきたいと思います。

さて、皆さんの多くは、大学生活のほとんどをコロナ禍の中で過ごすことになりました。さまざまな行動制限とともに、非対面型の授業が長く続き、演習や実習も制限が多く、さぞかし苦労されたのではないかと思います。まさに、この3年は、コロナ禍で世界がすっかり変わった大変な時期でした。この間、人類は英知を結集しながらこの感染症と格闘してきましたが、いまだその収束までには至っていないことは皆さんご存じのとおりです。

感染症の大流行は人類の歴史の中に幾度も起こってきました。もちろん今回の大流行は、航空機で世界を自由に移動できる現代だからこそ、ここまで急速に拡大したと言えなくもありません。しかし、古くは天然痘、ペスト、近年ではインフルエンザの大流行が繰り返されてきましたし、今回の原因になったコロナウイルスにしても、20年前にSARSとして大流行が起こっていました。その点では、たまたま私たちが運悪くその時代に出くわした、というよりは、こうした大流行が何時起きても不思議ではなかったということもできるでしょう。それは地震のような天災ともよく似ているかもしれません。

偶然と思いたくなるのは、私たちが、心のどこかで、今日と同じ平穏な日がまた明日に続く、と思い込んでいるからではないでしょうか。ある意味で、それが日常です。

しかし、そうした中で、このコロナ禍は私たちに、今日という日は永遠に続かないことを、そして未来は予測できないことに満ちている、ということを改めて気づかせてくれました。ウクライナ情勢も同様です。あっという間に世界の構図が大きく変わりました。

こうした現在の混とんとした世界で、私たちはいろいろな試練に立たされています。しかも、時代の変化は、どんどんスピードを増しているようにも思えてきます。そして、私たちは、予測できない未来に対して、もっともっと立ち向かう力をもたなければならない、ということを実感しています。

さて、皆さんは新潟大学の理念が、「自律と創生」であるということを覚えているでしょうか。この理念の「自律」は、まさにその言葉の通り、自分自身で立てた規範に従って行動すること、そして「創生」は新たなものを作り出すことです。新潟大学は、この「自律と創生」の教育理念のもとで皆さんに接してきました。

この「自律と創生」の精神をもう少し言い換えれば、他人の真似ではなく、自分自身で物事をよく見聞きし、事実を自分の目で見極めて、正しく判断していく、そういう習慣を持つことです。そして、それは、新潟のシンボルでもある柳のように、あの柳の枝のようにしなやかで折れない「真の強さ」を持つことにつながります。

私は、新潟大学で学んだ皆さんが、この「自律と創生」の理念と「真の強さ」をもって卒業してくれるものと信じています。それは、予測できない未来に立ち向かう力ということもできるものです。皆さん、どうかこの新潟大学の理念を忘れずに、未来の社会に羽ばたいていってください。

皆さんはこれからの人生においてさまざまなことに遭遇することになるでしょう。きっとその時に、皆さんが学んだ「真の強さ」が役立つことになるに違いありません。それが皆さんの道を照らす灯りとなり、行くべき道に導いてくれると思います。

そして、卒業・修了後も、皆さんが知的好奇心を持ち続け、学ぶことを忘れないでいてもらいたいと願っています。知的好奇心は創造力の源です。そして継続は力です。それが、これからの社会を生き抜く皆さんにとって、もっとも必要な力だと私は思います。どうか「知的好奇心」を失わず、「学び続けること」を忘れず、さまざまなことに挑戦し、そして自身の目標を失わずに、その目標に向かって進んでいってください。

最後に新潟大学の将来ビジョンのことをお話しします。新潟大学は一昨年に10年後を見据えた将来ビジョンを策定しました。そこでは、直近の未来である2030年に向けて、新潟大学が果たすべきミッションを、「未来のライフ・イノベーションのフロントランナー」となることと定めています。

ここでいう「ライフ・イノベーション」とは、単に「医療・健康・福祉分野」に留まらず、21世紀を生きる我々の「生命」、「人生」、「生き方」、「社会の在り方」、「環境との関わり」と、それらの土台となる「地球」や「自然」についての新たな価値と意味を生み出すための革新を指しています。

すなわち、新潟大学が目指す「ライフ・イノベーション」は、私たち人類を幸福にするための革新のことで、そうした革新のための研究を推進し、社会に還元することを目指しています。これは、卒業・修了する皆さんと共有できるものだと思います。

皆さん、新潟大学は皆さんの母校であり故郷です。新潟大学で学んだ誇りをもって、未来への一歩を踏み出してください。新潟大学はこれからも皆さんを見守っています。そして、皆さんが、どこにいても新潟大学と絆を結びながら、未来のライフ・イノベーションのフロントランナーとして、また、皆さんの後に続く在校生たちの目標となるように、各方面で活躍されることを願っています。

改めて、皆さんの未来に幸多きことを祈り、私の告辞とします。

本日はまことにおめでとうございます。

令和5年3月23日
新潟大学長 牛木 辰男