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学長メッセージ「この秋に卒業・修了する皆さんへ」2020年9月

学長メッセージ「この秋に卒業・修了する皆さんへ」

 

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、2020年9月23日(水)に予定していた令和2年度秋季卒業式は中止となりましたが、式典の開催に代わり卒業生・修了生へ向け、キャンパス風景や行事の写真を織り交ぜた学長メッセージ動画を制作し、本学WEBサイト及びYouTubeに公開しました(公開期間:9月23日~11月1日)。動画の公開期間は終了しましたが、その際の学長メッセージを以下に掲載いたします。

 


この秋に新潟大学を卒業する学部生の皆さん、そして研究科を修了する大学院生の皆さん、卒業・修了、まことにおめでとうございます。新潟大学を代表して、心よりお祝いを申し上げます。

例年は、秋季卒業式をライブラリーホールで開催することにしており、皆さんに集まっていただき、私もアカデミックガウンをまとって、お祝いを述べることになっています。しかし、今年は新型コロナウイルスの感染拡大が続いていることから、一堂に会する卒業式は中止となりました。皆さんにとっては、人生の節目でもある卒業式ですし、開催できないことは我々にとっても大変残念なことですが、どうかご理解いただきたいと思います。そこで、卒業・修了する皆さんの希望に満ちた顔と、皆さんの将来を思い描きながら、私から皆さんに、このビデオメッセージをお送りすることにします。

皆さん、新潟大学での学生生活はいかがでしたか?この半年間は、コロナ禍のため、授業は非対面型になってしまいました。そんな予期せぬことはありましたが、皆さんの在学中を振り返れば、さまざまな思い出がよみがえるのではないでしょうか。

ところで、新潟大学の理念を覚えているでしょうか?それは「自律と創生」です。文字通り、「自律」は自分自身で立てた規範に従って行動すること、「創生」は新たなものを作り出すことです。新潟大学の教職員は、この「自律と創生」の理念のもとで、新潟の街のシンボルである「柳」の枝のようにしなやかで折れない「真の強さ」を持った人材が育つことを願い、学生の皆さんと接しています。したがって、新潟大学で学んだ皆さんは、他人の真似ではなく、「常に自分で自分の規範を立てる習慣」を養ってくれたと、私は信じています。

すなわち、自分自身で物事をよく見聞きし、事実を自分の目で見極めて、判断していく、そういう習慣です。皆さんが新潟大学を巣立っても、この心を忘れずに活躍してほしいと思います。

さて、今回の新型コロナウイルスのパンデミック(世界大流行)について、皆さんは思いもかけぬ大きな出来事が起こったと感じているのではないでしょうか。しかし、このことは本当に予測できない出来事だったのでしょうか?

実は、今回のコロナ禍は私たち多くの人には極めて突然の出来事でしたが、こうした大流行は専門家の中ではかねてから警鐘が鳴らされていました。

そもそも、感染症の世界大流行は人類の歴史の中で何度も繰り返されてきた出来事でした。そして、ちょうど100年前にも非常に大きな世界大流行がありました。いわゆる「スペイン風邪」と呼ばれる新型インフルエンザの大流行です。当時の世界の人口は約18億人でしたが、その1/3の6億人ほどが感染し、数千万人が死亡したと伝えられています。また、この大流行は第二波、第三波があり、終息までに2年ほどかかりましたし、もちろん日本でも大きな流行がありました。今回のパンデミックは、ウイルスこそインフルエンザとコロナウイルスで異なりますが、このスペイン風邪の出来事によく似ています。

つまり感染症の大流行も、大地震などの天災と同様に、必ず起こりうる出来事の一つだったということができます。そしてそれは、人類が乗り越えなければならない、大きな試練の一つでもあります。

最近頻繁に使われるようになったSociety 5.0という言葉があります。人類がまず狩猟社会に始まり、第2の農耕社会、第3の工業社会、第4の情報社会を経て、その先に見えてきた第5の新たな社会をSociety 5.0というわけですが、この第5の社会は、サイバー空間とフィジカルな現実空間の高度な融合により築かれるものと表現されてきました。コンピュータ(AI)の能力は2045年に人間の能力を追い抜くと予想され、それまでには、リモートワークが進み、半数近くの仕事がAIにとって代わられる、そんな雇用大崩壊時代が来るなどの予測もありました。

こうした予測が、この新型コロナウイルスの大流行で、さらに大きく変わろうとしています。簡単にいえば、コロナ禍により、我々が想定していたよりはずっと早く、急速に社会の変革が始まったということでしょうか。そして、コロナの後は、今までの社会と同じスタイルに戻ることはきっとないでしょう。

現在のコロナ禍の中で、私たちはいろいろな試練に立たされています。しかし、それは新しい社会に向けての大きな変化ですから、新潟大学を巣立つ皆さんは、新潟大学の理念「自律と創生」を胸に、これを乗り越えていってもらいたいと思います。

卒業・修了に向けて、皆さんに三つのお願いをします。

一つ目は「知的好奇心を生涯持ち続けてほしいこと」です。知的好奇心は創造力の源です。ぜひ専門にこだわらず、さまざまなことに好奇心をもってください。
二つ目は「学び続けてほしいこと」です。継続は力ですし、どんなときにも学ぶことはたくさんあるものです。
そして三つ目は「皆さんが抱いている夢を生涯忘れないでほしいこと」です。それは皆さんがこれから生きていく上の道しるべにもなるでしょう。

卒業後・修了後にどんな道に進むとしても、どうか「自律と創生」を胸に刻み、自分自身でよく見聞きし、事実を自分で見きわめて判断しながら、「知的好奇心」をもって「学び続けること」を忘れず、自身の「夢」に忠実に進んでください。

新潟大学は皆さんの母校であり、ふるさとです。新潟大学で学んだ誇りをもって、未来への一歩を踏み出してください。そして、皆さんが、新潟大学との絆を深めながら活躍してくださり、輝きを増し、さらには皆さんの後に続く未来の学生たちの目標ともなってくださることを、心から願っています。

日本語には「はなむけ」という言葉があります。昔、馬が旅の乗り物だった頃、旅立つ人を見送るにあたり、旅人の乗った馬の鼻先を、これから向かう方向に向けてあげて、旅の無事を祈ったという習慣がありました。そこから、旅立ちや門出にあたり、贈り物をしたり、お祝いの宴を行うことを「馬のはなむけ」というようになり、さらに「はなむけ」という言葉になりました。したがって、このメッセージは旅立つ皆さんへの私からの「はなむけ」です。そして、最後に皆さんの前途を祈り「はなむけ」の乾杯をしたいと思います。

では、皆さんの未来に乾杯!

令和2年9月

新潟大学長 牛木辰男

英語・中国語版学長メッセージ

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